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環大生さんのビブリオバトル

 京の都では映画「弥勒」の光背の輝きがキラキラしていたようです。ロイヤルプレミア~完成披露試写会、成功おめでとうございます。
 自分は神戸に行きますよ!永瀬さんの出演映画、初日近くにスクリーンで見るのは初めて、それもご本人が登場されるそうですので正直足が震えます。

 そんな中で昨日は投票後に、鳥取環境大学の学生さんが主催される「ビブリオバトルin鳥取」に観戦にいきました

 紹介される本は、小説から漫画、句集など多種多様でした。
 昨今の出版本がメインでしたね。
 どうしてその本と出会い、どの要素に魅力を感じたのか、紹介者さんご自身の個性や来歴と絡めながら表現されていっていました。

 再読して下準備をきっちり行ったり、ただ「ココが面白い!」と言うだけではちょっと足りなくて、伝える人の個性がどれだけ伝わったかということで本の魅力も見る人に届くのかも。

 優秀賞の方も「前日本を読み終えたばかり」という方とか、「四畳半神話体系」の紹介されてて場が温まった時の「猫ラーメン」(作品中に出てくるラーメン屋)の一言が効いた方も^^;
 
 自分の学生時代に比べると、学生の皆さんは本当に表現力があり、遥かに大人に見えました。(自分は元いじめられっこだったこともあり、恐怖感からすごく狭い世界にいた気がします。それなりに楽しい生活でしたが、もっと表現したり、人と触れ合えばよかった。)
 イベントを盛り上げようとするエネルギーや、来客への心遣いも感じられて、ピッとこちらの背すじも伸びました。全体的に温かく、明るい気持ちになりました。
 「弥勒」学生スタッフさんも同じエネルギーを持っているのかもしれませんね。

 自分がもし「ビブリオバトル」参加したら何紹介しましょうね。
 007や中上健次だとちとただ作品内容のここ萌えポイントのレビューに過ぎなさそう^^;

 たまたま隣席に県内の河原町で古本屋さんを営業されている方がおられて、市内の新しい古本屋を教えて頂けたのも収穫でした^^市内の書店が閉店ということでガッカリしていたのですが、読書文化そのものはまだ続いていっていますね。

 
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恐怖省

 グレアム・グリーン著「恐怖省」

 第二次世界大戦のロンドン空襲のさなかの物語です。
 グレアム・グリーンはイギリスの代表的な作家で、早くから人気作家でした。
 カソリック者、共産主義者、そして英国情報部の元諜報部員でもありました。
 007シリーズの作家イアン・フレミングとは入庁時期もほぼ同時の同僚だったのですが、グリーン本人はMI6局員が主人公の話「ヒューマン・ファクター」では007的世界を皮肉っています。その中にはなりそこないのボンドみたいな青年も出ていきています。

 自作についてグリーンは「娯楽物(エンターテイメント)」「本格物(ノベル)」と分けていまして、「恐怖省」は 「娯楽物」に入ります。まだ数作しか読んだことはないのですが、両方の違いはあまりないようです。読みやすく、ドラマ性がある作品です。また、描写がとても映画的で、人々が生き生きと動いているので読みやすいです。
 「恐怖省」が著されたのは1943年、グリーンがMI6を退庁した年になります。

 
「背の高い、猫背の、やせた男で、黒い髪に白いものがまじり、細面の顔は彫りが深く、鼻梁はこころもち曲がって、口元には異常に鋭敏な感受性のこまやかさが感じられる」
 戦時のロンドン下で暮らす独身者、アーサー・ロウは、(ジェレミー・ブレッド氏イメージ?)破壊されていく街の中で「自由諸国の母の会」という団体の慈善市にたまたま立ち寄り、ケーキの景品を引き当てる。


 灯火管制の元で、度々空から爆弾が落ちてくる。市民は避難所で夜を越さなくてはならない。でも朝には地下鉄で人々は出勤し、パブでは杯を傾けます。
 

 グリーンの筆は、アーサーの背中にじっと張り付き、彼の思考、見聞きしたこと、経験したこと、変化などが細かく細かく描かれています。←実は読んでいく上でとても重要なポイントです!


 英国の国家機密を奪ったナチスのスパイ組織の暗躍に巻き込まれていくのですが、実は真実は明確に語られていません。ただ「東から来た」美しい兄妹とアーサーが出会うことで、かの敵国だと予想させる位で。陰謀物というよりも、むしろ全てを無くして影のように生きる男が、息を吹き返して新しくアイデンティティを得ていくのが主軸かなと思いました。

 空からドイツ軍の砲弾が降りそそぐ日々と、一人の男がはまり込んだ陰謀の対称が鮮やかに浮かび上がります。 陰謀はあるかなきか、目に見えない糸のように、アーサーを縛り誘導していきます。
 アーサーが自分を取り戻していくにつれて死体も増えていきます。
 また、途中で物語世界が180度変わる局面があります。アーサーにひっついて読み進めていくとかなり足元すくわれてしまいます。


 アーサーはかつて病苦に苦しむ妻を見かねて手にかけました。
 同情論から刑を受けず、精神病院に入らされるものの、もともとの病人ではないのですぐさま退院。しかし友人も去り、戦時下に仕事も無く、賄い付きのアパートで財産収入に頼って暮らしています。
 彼は豊かな子供時代を過したのか、郷愁と「美しいもの」「暖かで人間的なもの」への憧れと、生きることへの諦めが交錯しています。

 だからこそ、アーサーは、善行に拘ります。生きている証のように。

 愛するもの全てを無くし、追憶と憧れだけで生きてきた骸のような状態から、生き直すことを選んだアーサーの見えるもの。そこに「恐怖省」という言葉が重なってきます。
「恐怖省」とは何なのか。本当にある機関なのか。幻なのか。

 そこに書かれた答えは、物語の心臓部であり、グリーンの小説によく顔を出すテーマだと思いました。
 グリーンは「愛情」について深く考えていた人だったのだろう、と感じます。
 これからも読み進めていきたい作家さんです。
 

妖魔夜行 ~闇への第一歩

角川スニーカー文庫 山本弘

10月に新作が出版されると、twitterで目にしてあわてて購入しました。

高砂が大好きだった小説シリーズです。

現代日本の中で人間にまぎれて生きる妖怪たちが主人公。
この世界の妖怪たちは「人の想い」によって生まれてきます。
鬼とか座敷童子などの伝承や都市伝説、あるいは何かのこだわりなど、さまざまな想いの形態から生まれてくるのですよね。
この設定は今でも妖怪世界のノーベル賞級のアイディアだと思います。


山本弘さんは、旧シリーズのメインライターさんというのも嬉しい。今や星雲賞作家さんですね。

読んだところ、基本的設定は変更がなく、1990年の妖魔夜行の時間の針が進んだ世界になっていました。妖怪はまだ人間たちには知られていないようです。

亜希は高校一年生の少女。彼女はクラスメイトの蓮也に恋をした。
彼女の精一杯の努力の末、2人は結ばれた。
しかし、「幸せ」に浸る亜希の香りは、人ならざるものを引き寄せる。
「幸福な人間」を恨み、爆死にいたらせる妖怪・バッドエンドが彼女を嗅ぎつけたのだ。
蓮也は神楽坂のバー「深海」に亜希を誘った。そこにはバッドエンドを追う者たちが集っていた。蓮也は打ち明ける。自分も、「深海」に集う仲間達も、バッドエンドと同じ「妖怪だ」と。

亜希は何もないところでよく転ぶようなどじっ子で、容姿も冴えない眼鏡娘。
妖怪として生きることになるのですが、その決断もあっけらかんとしています。

バッドエンドもかつては人間でした。

人である亜希とバットエンドを妖怪化させるアイテムとして「奇殻」があり。これが唯一の新設定ですね。



読み終えて思ったのですが、
妖魔夜行は、やっぱりジュブナイル=ライトノベルです。
現代日本が舞台で、妖怪たちは大人設定の人も多いので、つい読者年齢も高めに想像してしまうのですが。基本は少年少女世代に向けたものだと思います。


妖魔夜行は現代日本社会が舞台で、不幸の手紙やパソコン通信、アニメや特撮など、時代に平行したテーマが描かれてきました。最初は1990年代ですので読み返すと古いときもあるのですが、妖怪という斜めからの視線で切り取った現代社会の図は面白かったです。

この度の主人公は、10代の少女亜希。
旧作の摩耶ちゃんと同じ世代ですが、少女の目を通しての日々の描写は、その時期をはるか昔に過ぎてしまった読み手には新鮮でした。
その点でも「原点に戻った」作品だと思います。Hしてしまった亜希ちゃんと蓮也くんに対して、妖怪仲間が怒りまくる所とか、父親世代の山本さんの見方が出ているようで面白かったですね。

彼氏の蓮也くんはまだ一面しか見せていないし、蓮也くんの妹になる鈴花の活躍もこれから。鈴花と亜希ちゃんとの数ページに渡るガールズトークはああ、わかるわかると頷いてしまいました。山本さん、よく観察されている!

バッドエンドと亜希、2人が簡単に、人間を捨て妖怪になることを決めたのは、それまでの日々が苛烈なものだからでした。2人とも、いじめの被害者というトラウマを抱えていました。人を人とも思わない扱いを受け、自分を否定して世界全てを憎む日日を過ごしていました。

バッドエンドさんが屈して亜希が抜け出したのは、恋をしたからと、光のあたるところに行きたい、と願う気持ちがあったからでしょう。バッドエンドさんが年が上で、社会に出た後低収入で夢も持てなかったという係わりはあるかもしれません。

この数年で、光の当たった感情は妬みの感情ではないでしょうか。ネットの上では誰かが誰かを妬む叫びの声がたくさん転がっています。妬みの感情はプルトニウムのように消えることはありません。「不幸になってしまえばいい」こういう言葉を、するっと出してしまうのが妬みの念です。今の時代、妬みほど強力な感情はありません。持つ側に心身を消耗します。

「相手だって努力している」とかそれを勇める言葉はあり、真実にはなるのですが。でも、そういう慰めって、自分は努力をしていないので駄目だ……と追いつめる原因になりますので、あまり好きではないです。頑張っていない人はいないと思います。

亜希ちゃんは、自分を変えたい、少しでも前向きになりたいとあがく気持ちと、蓮也くんに恋をしたタイミングが上手く重なったのですね。
でも、タイミングが重ならず得たいものも得られなかった人も少なくはないと思います。
「妖魔夜行」の場合、自己を肯定できた亜希ちゃんも、妬みにのまれたバッドエンドさんも、妖怪化の道を選んでいるわけで……。亜希ちゃんのこれからが気になります。

ライトノベルを読む子達は、蓮也くんのような彼氏やかなたのような友人に恵まれず、「深海」「うさぎの穴」のような、学校や家庭とは違う身を寄せる場もなかった子も少なくないと思う。別世界に誘ってくれる小説やヒーローたちは逃げ場になっていました。
昔「うさぎの穴」(と八環さん)の物語にのめりこんだ私は思います。


今後もぜひ続いていってほしいシリーズです。
角川ホラー文庫など、別ノベルでも見てみたいかもしれません。
挿絵が一枚のみというのは、少しさびしかったですね。次回は「深海」キャラのイラストを見たいなあと思います。


(余談ですが)

私自身は、努力するということは、自分の可動域を増やすことだと思っています。
考えでも、実際の行動でも。劣等感に押しつぶされてまったく動けなくなっている人はたくさんいいます。そこから少しずつでも、自分にとってより良い環境を求めていくのも努力のひとつではないでしょうか……?
プロフィール

高砂 舟

Author:高砂 舟
twitterもやっています。
@takasago_fune

偏った本読みと太極拳が趣味です。低レベルですが腐です。
今はグレアム・グリーン継続中。星野道夫さん、宮澤賢治氏、藤沢周平氏をよく読んでいます。
植田正治氏の写真も大好物。

大人計画とグループ魂とっかかり中です。

宝塚は長く観ています。観劇回数は少なくとも、おばあさんになるまで細く長く見ていきたい所存。

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