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宝塚花組ファントム感想~地下の全てのともしびは①

宝塚にて花組公演「ファントム」観劇してきました!
東京公演も始まった後、またも思い出し書きなのですが、お暇な方、見て下されたら幸いです。

見てよかったです。
海外ミュージカルの宝塚翻案ものは何度か観劇したのですが、その中で一番宝塚歌劇らしい作品だと思いました。

まず、舞台がとても美しい。
舞台を覆う緞帳には何百本も蝋燭が描かれているのだけど、そのともし火が微かに揺らいで見えるのです。
劇団四季版「オペラ座の怪人」のような豪奢さとは違った美意識で作られている舞台という気がします。
地下の中に作られた森の場面も、本当の自然ではないため理想郷のような明るさで、「ぼくの領地なんだ」というエリックの台詞の悲しさも浮かび上がるようでした。


客席がまだ明るい時から前奏が始まったり、指揮者さんとファントムの入れ替わりがあったりと、ケレン味も一杯。
高速のセリで出現したり消滅するファントム、下からの風が吹きあげる位のスピードで、毎回セリに乗るとむさんの舞台度胸は大変なものだったのでは、と思います。


オープニングにて、白いチュチュを纏った「鳥」が、一斉に黒い衣装に変わる場面も忘れられません。
黒い鳥さんは脚が透けている軽装なのも艶っぽい。
白いチュチュから黒いチュチュへの変化なので、ちょっと映画の「ブラックスワン」を連想してしまいました。
そこから、ファントムの世界が広がっていく気がします。


蘭寿とむさんのファントム、本当の名前はエリックは、驕慢で臆病者の青年です。
保護者のキャリエールを「おまえ」、世話させている従者を「こいつら」と、言葉遣いも偉そう。
キャリエールがいないと、自分も従者も生きてはいけない立場なのに、支配人を下ろされたキャリエールに対し、「どうしてくれるんだ」と責めてしまいます。

宝塚なので美しくメイクされているのだけど、多分「お岩さん」のように、見る人に悲鳴をあげさせてしまうような外見だったと思います。エリックは、仮面で顔を隠しながら、何度自分の顔を責めたのか分かりません。

「地上は地獄だ」とうそぶいているものの、彼は本当に社会に出たことはないのですよね。
地上の風景は、漏れ聞く観客の会話とか、元は外界の人間―ただ、捨てられた浮浪者たちであった従者たちを通してしか知らないので、恐怖の対象だったのかもしれません。自分の顔から、上の世界ではいてはならないものと信じ込んでいたのでしょうね。
審美眼に優れたエリックだったからこそ、耐え難い心地だったのかもと想像します。


そういうエリックが、本当に「現実」を思い知ったのは、クリスティーヌの悲鳴なんだろうな。
一瞬、心を結んで、自分から「顔を見たい」と望んでくれた女性にも逃げられてしまった。
その時、精神の底をみてしまったのだと思う。とむさんのエリックは、子供の叫ぶような鳴き声でした。

でも、その一瞬で、大きく成長したんだなと。
人が変わるのは一瞬の気がします。
断ち切った瞬間から、引きずっていた何かは過去の暗黒へと消えていったのでしょう。

「結局はよかったんだよな、ぼくがこの世に生を受けたのは」―シンプルだけど、真実の言葉です。
またも、「彼女はぼくを愛してると思ったんだ」という台詞の穏やかさ、悟りの色。
傲慢に接していたキャリエールにもちゃんと謝って、叶えられなかったこと、でも恵まれたことを数え上げるエリックは既に大人の男性でした。

 だからこそ、クリスティーヌと再会した時、彼女の瞳を見て、心から悔んでいること、彼女からの愛情は減じていないということを知ったのだと思う。嬉しかっただろうな。


脚本はとても詞的で、立ち上がって響いてくる言葉で綴られていました。

また、観劇日の直ぐ前に映画「ブラック・スワン」を見ていた為、どちらも芸術を扱った作品として繋げて見ていました。ニナもエリックも優れた才能を持つ臆病な若者でしたが、最後はニナは母親を突き出し、ぬいぐるみを捨てて、エリックは気持ちを注いだ人を鏡のようにして本当の自分の貌と直面し、父親と語り合うことができました。
そして二ナは至高の表現者として、エリックは純度を増し成熟した大人として、古い殻を脱ぎ捨て終末へと向かっていきます。ほんの数日間で、

宝塚マジックが至る所で効いています。
「ファントム」は愛情に満ちている。恋愛、親子愛、芸術への愛、それがエリックという1人の青年に集約されています。例え半ば狂気でも、母親はエリックに惜しみない愛情を注いだのだろうし、彼の心にはそうやって作られた素地がある。最後、その素地から育まれた翼が大きく羽ばたいたのが見えました。

書いていて思ったのですが、それは、母親べラドーヴァの精神の旅路に似ているのかもしれないです。
信仰者が臨まぬ不義をし、堕胎を考えるまで追い詰められ、最後に子供に笑顔を向ける位に成ったというのは、彼女にとっても何度苦しみの波を潜り抜けた後

また、エリックとヒロイン・クリスティーヌの愛情。宝塚はこうでなくては!と思います。
「You are Music」、銀橋を歩く間に、指を重ねるだけから、深く手を繋ぐように変わっていく。そういう細やかなところに(宝塚的には鉄板かもしれないのですが)キュンキュンきてしまいました。


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プロフィール

高砂 舟

Author:高砂 舟
twitterもやっています。
@takasago_fune

偏った本読みと太極拳が趣味です。低レベルですが腐です。
今はグレアム・グリーン継続中。星野道夫さん、宮澤賢治氏、藤沢周平氏をよく読んでいます。
植田正治氏の写真も大好物。

大人計画とグループ魂とっかかり中です。

宝塚は長く観ています。観劇回数は少なくとも、おばあさんになるまで細く長く見ていきたい所存。

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