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「ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女」フィンチャー版

2月23日に見に行きました。
原作のシリーズを愛読しておりまして、更に好きな俳優さんのダニエル・クレイグも出演されるということで、長い間楽しみにしていました。

「移民の歌」と共に流れるタイトルバックが美しかったです!
予告編でも有名になった「移民の歌」と共に、黒いバイクの肌→石油と漆黒のイメージ。マシンの冷え冷えした黒と、石油の滑る黒の表現と、合間に蛇みたいにうねる電脳のコネクタ、コード類。そしてリスベット&ミカエル。

ウェブ上でも閲覧はできますが、迫力と美しさがぜんぜん違うので、ぜひ映画館で見て欲しいです。

→ちなみに、フィンチャー監督のPVの傑作です。こちらもモノトーンの美が際立っています。

北欧の冬の薄暗い蒼と雪の白が美しかったです。
ごうごうと風が荒れ狂う中に雪が舞う場面は、スクリーンに見入ってしまったのですが、その中にいるだけで命を奪われそうになる自然の怖さも感じました。
「ミレニアム」の表紙とか、お店のロゴとか。さりげないところにシンプルでお洒落なデザインがあり、また、音響も臨場感がありました。雪風や悲鳴や、震えるはずのないものが震える音とか耳に残ります。
原作を大胆に脚色されていました。
「ドラゴン・タトゥーの女」でコアとされる部分、映画の中で必要とされている面だけを切り取っています。特にヴェンネルストレム関係のことはざっくり。よってミレニアム編集部関係の下りも殆ど姿を消しています。


娯楽性の高いところや、登場人物を魅力的に描いていく下りも容赦なく切り捨てていっています。その分をミカエル&リスベットの描写に割かれていました。


リスべットは電脳を操るスーパーヒロインでなく、ミカエルは高い理想を持つパワフルなジャーナリストではなく。

高い能力をもちながら、幼い頃から言われなき偏見と暴力にさらされ、世間に対する警戒心で殻に閉じこもっているリスベット。敗者のレッテルを貼られた上に畑違いの事件捜査に召還されて、右往左往している中年男のミカエル。そんな印象を受けました。


リスベットを演じるルニー・マーラさんは、中世の少女図みたいな、繊細な顔立ちで横顔の鼻のラインが綺麗です。やせっぽちで小柄でまるで少年の様な外見で、か弱さもどこか漂わせています。


映画の前半ですが、彼女は大きい斜めがけ鞄の肩紐を、両手でぐっと掴んでいる仕草をよくしていて、それは全身に力が入っている姿勢なんですね。


人は、「外見や標準から外れた人間、世間のマナーを守っていない人間」には警戒感と共に、「この人間なら、嫌われてもこちらは損をしない/傷付けても痛みを感じないだろう」と適当に扱ったりはしないでしょうか。
人間誰しもそんな暗部は持っているのですが、リスベットはその偏見や迫害に幾度もさらされていました。
自立して生計を立てていながらも、後見人による生活の管理を求められています。
とうとう口座を管理する権利を奪われてしまったリスベットが上げる叫びは忘れられません。

スウェーデン版のリスベットは体を鍛えた強い女のイメージだったそうですので。正反対の創り方をされていますね。


相棒のミカエル・ブルムクヴィストはダニエル・クレイグ。
とってもミカエルなダニエルでした。
今まで何度かダニエルさんの主演大作を見ていたのですが、作品のスケールに関わらず、映画の世界の一部分になる役者さんなんだなあと実感しました。

ちなみに殺しのライセンスを持つ最近のダニエルさん。殺しのライセンスを持つ男2012年新春別人のようです。


たとえばカウボーイ&エイリアンは、スーパーヒーロー物なのですが、ダニエルはそのまま「開拓時代に、記憶を失っているが、片腕に奇妙な細工物が植え付けられている男」なんですね。
やっぱり舞台出身だからでしょうか、スター性とか華とは別の面で、力量を発揮する人です。


今回のミカエルはもセンスはよいけどちょっと崩れた風体とか、デザインが微妙なパジャマ姿とか、傷口縫われてボヤく姿とか、格好良さのかけらもなく(ほめてます)、生身感があります。


ドラガン・アルマンスキーとの対峙の場面も、激高のミカエルVS冷静なドラガン氏でしたね。
ドラガン氏役のゴランさんが紳士的なハンサムで、短いシーンながら心に残りました。
2,3と続くなら、ぜひドラガン氏の活躍を…・・・!


ミカエルは人をそのまま、偏見もなく人として扱うことのできる人なんだと思います。
一旦信頼したら、自分が損する可能性があっても相手に力を貸せる人なのでしょうね。
しかも無意識にして。リスベットにとってはそんな人間の存在は驚きだったのでは。


間に強烈な性暴力の場面があり、暴力場面が苦手な人、被害経験がある人は見ていてダメージを受けてしまうかもしれません。
それと、猫を愛する人もショックを受ける可能性が・・・・・・(可愛かったのに涙)


レイプ加害者のビュルマン弁護士は一見穏やかな家族人でした。レイプの後も後悔しているそぶりを見せます。
でも、加害者がやさしげな顔を見せるというのは、絶対的な力量の差がある場合が殆どのためです。
痴漢がおとなしそうに見える、後から警察に突き出したりしないような人に手を出すのと同じです。
(性被害を受けた人が、ショックを軽減するために被害を無いものとして扱う事も、長い年月が経って、何故訴えなかったんだと自責する事もあります)


映画感想から離れてしまいました。


ブラックホールのような引力がある映画です。
冴え冴えとして、暴力的で、凄惨で、でも美しく繊細。
これほど工芸品の様に作りこまれていながら胸に迫る作品はなかなか出会えないと思います。


以下ネタバレになるのでたたみます。
犯人は、罪深い女を拷問し殺すことを慣習にしていました。
元はどういう思考でできあがった行為なのかは描かれていません。ナチとの関連を匂わせていたのですが、映画でも、原作でも、狭い家族のなか伝承されるおぞましい仕来りに成り果てていました。
人間の生身の痛みや声を封じる「慣習」について、ラーソンはミレニアムシリーズを通して描いていた気がします。


リスベットはミカエルに会ってから、眼差しに険が取れていくのがわかります。
Hシーンは大胆でしたがボカシも大胆でした。
リスベット、借金の申し込みを簡単に受けたミカエルに対して目を丸くして「OK」と返す所が可愛い。
自分が持ちかけた話とはいえ、快諾してくれたことに信じられなかったのでしょうね。
リスベットの精一杯の好意の表現を、ミカエルさんめは無意識に踏みにじってしまいました。
ミカエルさんは誰かに求められたらそのぶん応えてしまう人、また非常にモテるマメな人と原作でも描かれているのですが。そういう優しさは時に誰かを傷つけてしまう可能性があるんですね。

web上でタイトルバックを再見しました。

リスベット、ど れ だ け ミ カ エ ル に 怒 っ て る ん だ。
正直、私も原作見ていて何度か「殴ってやりたい」と思ってました。
これダニエルさんでなければきついと感じながら読んでました。
劇中の二人の行為と、タイトルバックの中の繊細な二人の表現が対照的。
リスベットの悪夢なら、彼女のミカエルへの心のつながりが分かりますね。

余談ですがパンフレットも、監督や俳優さんのインタビューも含めて充実した内容ですので、映画に惹かれた方は購入されるのがお勧め。各役に対する解釈や背景の拘りなど、映画の世界をさらに深めることができます。


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プロフィール

高砂 舟

Author:高砂 舟
twitterもやっています。
@takasago_fune

偏った本読みと太極拳が趣味です。低レベルですが腐です。
今はグレアム・グリーン継続中。星野道夫さん、宮澤賢治氏、藤沢周平氏をよく読んでいます。
植田正治氏の写真も大好物。

大人計画とグループ魂とっかかり中です。

宝塚は長く観ています。観劇回数は少なくとも、おばあさんになるまで細く長く見ていきたい所存。

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