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大きな流れの中に 宝塚歌劇星組公演「ダンサ・セレナータ/cerebriy」

5月26日に、星組「ダンサ・セレナータ/cerebriy」を観にいきました。
涼紫央さん、白華れみさん、碧海りまさんも、南風里名ちゃん、稀鳥まりやさん、ひなたの花梨ちゃんなど、多くのスターさんの卒業公演であります。

平日一回公演の観劇でしたが、観客席は曜日は関係のない賑やかさで、星組の皆さんは代わらない高い熱度の演技をされていました。ああ、だから宝塚、好きだなあと思います。

「ダンサ・セレナータ」の脚本・演出担当の正塚晴彦先生は、ハードボイルド的世界で、ロマンに走らず自然体の男性像を描く作家さんとして評論家からもファンの間でも一定の評価があった方でした。一時期は「正塚主義」みたいな流れがありましたね。
月組トップスター・久世星佳さんとのコンビが有名でしたね。ビデオで何度も正塚作品は見たのですが、実際に観劇した雪組のトップコンビ・絵麻緒ゆうさん&紺野まひるちゃんの一回きりの公演「追憶のバルセロナ」が印象に残っています。

今回は久々の観劇でした。
海外の短篇小説か単館上映の洋画みたいな印象を受けました。


宗主国と植民地、二つの国があり、宗主国の経済は植民地の産業に依存している。植民地が独立なぞされたら、宗主国は不況に陥り、金持ちは逃げ、文化芸術を楽しむ余裕は失われてしまう。二つの国は争い、秘密警察は、植民地の反乱を断つために暗躍を続けていた。

そして、その宗主国のクラブ「ルア・アズール」のトップスター イサアク・バルトロウと植民地出の娘、モニカが物語の中心です。


正塚先生は男同士の友情のほうに重みをおかれている印象がありますが、イサアクとモニカは純粋な「恋愛」そのものが際立っていた気がします。

男女2人が縁があって出会い、さまざまな出来事があり、仲を深めていって、お互いに好きかもしれない…と思いはじめる頃。恋愛の一番ワクワクする時期の話だなあと思います。
そして、カップル成立に至る前に、余韻を残してお別れ、という。ある意味恋愛の一番おいしい部分を生かしてあります。

「あの女に惚れているのか?」「これからそれを知るところだ!」というやりとりもあります。

柚希玲音さんは主人公の「イサアク」。
クラブのボスでショースター。
演出も自分で行い、お店やチームのどっしりした重みを支えている人。
大黒柱として、あまり動かないけど、物事に広く視線を行き渡らせている人ですね。

ヒロイン・夢咲ねねさんは植民地出身の娘、「モニカ」です。
ダンスには天性の勘があり、イサアクに見初められます。
ダンスの途中から加わる場面があるのですが、リアル・アメコミのヒロインの手足の長さに、存在感が周囲から際立っていました。
黒塗りのお肌に汗が浮いているのを双眼鏡で見てしまった時にはかなり動揺してしまいました。しなやかについた筋肉が汗ばんでいるのを目にしてしまったら……!

途中秘密警察に痛めつけられたりするのですが、それでも凛とした強さがあります。

モニカの兄で、独立運動の戦士の「アンジェロ」は宙組から来られた十輝いりすさんです。
FNSでは把握はできなかったのですが、とっても背の高い兄ちゃんでした。
ねねさんと同じく黒塗りしていますから、さらに目立ちます。
彼も拷問を受けたりと厳しい扱いを受けますが、人間くさい熱い演技は霞むことがなかったです。


イサアクのパートナーである白華れみちゃん。
舞台人のプライドを持つ格好良い女でした。
モニカに厳しくする言葉も、芯が通っています。
今回の作品の「魂」を表現する役の一つのような気がします。
華奢だけど心に情熱と誇りを持つブロンドの美女。

れみちやんも今回で卒業です。
恋に燃えつきる女、素朴で愛らしい王宮のメイドさん、虚栄心もがめつさも強いけど、とびきり華やかで肉食系のマジシャン・クイーンとれみちゃんは本当にいろいろな顔を見せてくれました。
「二番手はおいしい」と宝塚ではよく言われますが、娘役もそれは同じ、と華奢な姿で体現されていましたね。娘役さんの希望の星ではなかったでしょうか?


秘密警察のホアキンは紅ゆずるさん。
国の政府がグズグズになっていることを肌で感じながらも、仕事として反乱者の摘発も行う男性です。紅さんの語るホアキン像は的確でした。
自分達は似ている、とイサアクに語りかける場面もあるのですが、案外そのとおりかもしれません。

部下を使いえげつない尋問を行いながらも、もっと頭上の権力者の動向には逆らえないという人。硬直化した国の手足となって働くことを、あえて単純化して解釈し任務を遂行する人です。

男役的な格好良さとは別の面の個性がある人でしたが、紅さん自身の演技力がプラスされて、強いキャラクターになっていたように思います。

すべてが終わった後は、案外「ルア・アズール」の常連になっているのかもしれませんね。


「ルア・アズール」のバーテン。ジョゼさんは涼紫央さん。

はい高砂はとよこさん贔屓ですので、これから語らせて頂きます。
ジョゼは内気そうで常におだやかに黙っていて、よほどのことがないと激高しない青年。

ジョゼというキャラクターの毛並みの良さ、バーテンダーとしてのプライド、無口ながら店全体を見渡しているところ、アンジェリータを特に気にかけている所。

好きなキャラクターです。「ダンサ・セレナータ」自体好みの系統の話で、特にジョゼみたいなキャラクターは惹かれることが多くて、萌え萌えでした。

台詞が少なくて、そこにただいる、という宝塚の男役スターさんにしては珍しいタイプの役柄です。

たぶん象徴の人なのだと思います。
キリスト教会のマリア像、お寺の観音像、楽屋の神棚みたいな、いつもそこにいて、自然とその人がいることで場が作られるような。


アンジェリータがショーの魂なら、ジョゼはクラブという場の魂。
2人が惹かれ結ばれるのもわかる気がします。

クラブ「ルア・アズール」に、正塚先生は宝塚歌劇の伝統を重ねているのではないかなと思いました。
ここの所観客層も変わった、動員数も削られてきているという話も聞きますが、お芝居の中のどんなに時勢が変わっても、クラブにはお客様が帰ってくる、という台詞には正塚先生の思いがこめられている気がします。

そうイサアクが一番愛しているのはお客様なのです!

時代は移り変われど、ショーは続くもの、ショーの演じられる小屋には人が集まるもの。
百年続いた宝塚に重ねてあるような気がしてなりませんでした。

そして、今回卒業されるとよこさんは、その宝塚の伝統の隣に立つ人なのだと思います。
正塚先生も、あえて宝塚の男役としては珍しいタイプの役を割り振ったのでは。
お芝居の最後、ジョゼのした事について語られた時、少し涙がでました。

ジョゼは、国が混乱したあとも国の、クラブのあった土地から家族と一緒にいた気がします。そういう深い余韻が流れていました。


とよこジョゼさんは綺麗でした。きっちりとつくった髪型とか(何でかわからないのですが、今回髪型がラフな方が多いです。時代的に男性はカッチリとした髪型を作るころだと思うのですが)身なりからジョゼの毛並みの良さが伝わるし、透明感がすごく美しい。

台詞がとても少ない役なので、想像する余地は大きいです。


しかし、ちょっと思ったのですが「架空の場所」を舞台にする物語は、どうしてもスケールが小さくなるなということです。「バルセロナ」の時動乱の時代そのものの骨太さと、それに翻弄されながら立ち向かおうとする人々の強さがあまりなかったような。
時代の変化の中で、人々が一気に駆け抜けていくのを目の前で見るような作品でした

また「オーシャンズ11」や「天使のはしご」で層の厚さを示していた星組にしては役柄が少なかったのは残念でした。みやさん&ともみんの抜けた穴、これほど大きいとは……。
まだまだ綺羅星のようなスターさんはいると多いますので、これからは彼らに光が当たってほしいです。

気を吐いていたのは一人ひとり名前もついていた兵士チーム。一人一人名前がついております。
十碧れいや君は卒業ですが、礼真琴ちゃん&ひろ香裕ちゃんは頑張っておりました。
ねねちゃんに絡むおいしい役割なものの、ちえさんにのされるは、紅さんにどやされるわで忙しい役割でした。とくにひろ香君は舞台を駆け回って元気一杯。
柚希さんコンサート「REON!」の休演なんて忘れてしまう威力でした。

ひろ香君の来年の台湾公演は、お祖母さまから親戚一同が集まりますから、皆さんに心配かけさせないように、どうか体は大切にね、と思わずにいられません。
新人公演は鶴美さんの役です、真ん中で踊ることも多いです。これからどんどん、光を増していくのでしょうね。


ショーの「cerebriry!」は現代的なショーでした。
だらっとした南国ホリディの夢咲ねねちゃんの衣装など、今の流行を取り入れていましたね。
紅さんのコメディセンスはかなり高いことに気づきました。今後に期待。
涼紫央さんのクラシックな風情が素敵でした。「ノスタルジア」、きっちり軍服なのにキラキラアクセサリーに、とよこさんのこだわりを感じました。
涼さんの場面は、優雅でしたね。
柚希さんとの絡みもあって、それはそれは嬉しかったです。
迷彩服とTシャツとピンクの似合うトップさんと、貴族的でつねに美学を持っているスターさん、ふだんはほっこりした仲良しさんでしたが、面白いコンビでした。
できたら、じっくり絡む作品を見てみたかったと思います。

クライマックスは柚希さんの「golden days」でした。
栄光の道を歩んでいたスター(柚希さん)がファム・ファタル(夢咲ねねさん)に出会い、堕落していくという筋が与えられたダンスで。
礼音さんのダンスは俊敏さ、雄雄しさ、孤独感が現れていました。
エネルギーの塊、でも手負いの獣の咆哮のように荒々しく。そしてねねさんのファム・ファタルは宝石のように硬質で美しい。
力強さと不安定さが共存しています。
多くの星組メンバーが移動されますが、柚希さんと夢咲さんはトップコンビとして一番大きい星として輝いています。ちえさん&ねねさんのコンビ、次回作は三部作という特殊な形態の公演で、新しい段階に移っていかれるような気がします。

今回のお芝居は、たぶん日を追うごとに深化していく作品の気がします。
隅々まで目を凝らしてみる甲斐はありそうです。
大きなお別れのある公演、千秋楽まで、舞台上のかたがたが元気で過ごされることを心から願います。
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プロフィール

高砂 舟

Author:高砂 舟
twitterもやっています。
@takasago_fune

偏った本読みと太極拳が趣味です。低レベルですが腐です。
今はグレアム・グリーン継続中。星野道夫さん、宮澤賢治氏、藤沢周平氏をよく読んでいます。
植田正治氏の写真も大好物。

大人計画とグループ魂とっかかり中です。

宝塚は長く観ています。観劇回数は少なくとも、おばあさんになるまで細く長く見ていきたい所存。

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