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「Skyfall 」~ジェームズ・ボンドはどこに行く


007シリーズの新作「SKYFALL」を初日に鑑賞しました。
本拠地・英国では史上最高のヒット作とのことです。それまでのトップだった「アバター」が十一か月掛って作った記録を二か月以内で打ち破る快進撃!
英国では生きる伝説なのでしょうね。


個人的には監督のサム・メンデス氏の作品は好みの作品が多く、スタッフさんもダニエル・ボンドのお披露目作である「カジノ・ロワイヤル」組&メンデス組ということで大きく期待していました。


ダニエル・クレイグ演じるボンドシリーズは「カジノ・ロワイヤル」と「慰めの報酬」と二作続きましたが、今作「スカイフォール」との間には深い川が流れる印象を持ちました。
経験を積み、ボンドはベテランになりました。全二作と比べて、顔に深く皺が刻まれ、「伝説の」揶揄交じりですが呼ばれる007です。

演じるダニエル・クレイグさんの顔つきが変わったということではないのですよね。
(同年公開の「ミレニアム」でのミカエルはかなり若い役作りです)ダニエルが「スカイフォール」のボンドに合わせて作り上げられた貌だと思います。相変わらずの役者魂。

二時間半の中で、彼は自暴自棄になり、人を救おうとし、失い、相変わらずの無茶を見せて傷だらけになり、人を敬い、ジョークを飛ばします。

個人的には「慰め」から歳月がたち、組織の中での立ち位置も変わってきたのか、ボンドも「人の中で働く」ということを意識しだしたのかもしれません。今までにはない情感を感じました。クールで無駄な事しないボンド中佐も好きだったのですが、若さを失った代わりに、図太く人間味も増しました。
繊細で豊かな感情がなかにある男性だと、十二分に伝わって、惚れ直しました^^


そんなダニエル・ボンドと同様にずしりと重い二時間半です。
ドラマもアクションも密度が深く、例えるなら香り強く、フルーツやナッツの中身もたっぷり入り、長年持つブランデー・ケーキのような質感です。

「カジノ・ロワイヤル」のスタッフさんが復帰されたということもあるのでしょうが、ダニエルの全身を使ったアクションが至る所で見られます。とても無茶です。力技です。

ボンドカーにボンドバイク、そしてボンド重機も復活!

特に早馬を乗りこなすようなバイクの操縦姿は格好良いなと感じました。
ダニエルのボンドとバイクはよく合いますね。


モロッコ→ロンドン→上海→マカオと舞台を変えていくのですが、それぞれの画面のカラーが異なるのが面白い。上海は深海のように静かで美しく、マカオは猥雑で過剰。
特にマカオは、ディーラーの女の子の眼福なスタイルからカジノで飼っているペット…?まで「そこまでやるか」と感じさせるものがありました。

ボンドの好色ぶりもいかんなく発揮。男性にセクハラも受けていますがこの人ヘテヘテですね。原作でやらかした「いきなりタオルいっちょで女の子強襲☆」を見せてくれて鼻の奥がつんときました。ボンドはそれでいい!

でもとうとうカミング・アウトしてしまった気がしてなりません。ボンドシリーズの孕んでいた同性愛的志向を。今後もそれでいってほしいです。

最初から終わりまで、巨大な列車のように突き進むパワフルな作品です

「古い物が好き」とボンドの台詞であったように、現代と古い時代のものとカクテルされているのも面白さの一つ。「現代のジェームズ・ボンド」として疾走していたダニエル・ボンドシリーズですが、彼は古きものにも愛着を感じているようです。
MI6の仮庁舎のデザインや、ボンドの着る服など、クラシックの回帰が至る所に感じられました。「古い物が好き」という彼の根源も見えます。
要するに、古いところで育ったから…なのかな。

特に心に残ったことは、登場人物すべてが、機能的に繋がり何らかの美しさを表していたこと。ただの背景になっている人がひとりもいません。

ヒロインのセプリンは儚さを、Mの腹心であるターナーは忠誠を。
悪役のシルヴァはモンスターチックなカリスマ性を。一度はボンドを圧倒させたパトリスの俊敏さ。マロリーの厳しさ。(ボンドに対して赤点を示したのは、彼が同じ軍人かつ中佐で、体が動く限界を知っていたからなのではないかなと思います)新しいキャラクター、Qはなんだかとてもキュート。強面のボンド中佐のいなしかたもうまいうまい。
特にMは、今回の作品の核をなすヒロインですが、今まで培ってきた、彼女の格を強く感じました。

MはMの輪郭を失っていないのですよね。彼女自身に深くかかわる物語でありながら、ジュディ・デンチさんの育ててきたMの佇まいは損なわれることはありませんでした。
 

以下は私感を。ネタバレ含みです。

全体は、たぶん「愛の話」だと思いました。
男女がセックスする愛ではなく、人間と人間が繋がる感情に名づけられるもの。
ボンドが一番愛している人間は、今はMだと思います。
ボンドの愛し方は、信頼し忠誠を誓う形で表現されています。
男女としての「ホンキ」はきっとカジロワのヴェスパーだけ。六年間、その記憶を塗り替える女性は現れなかったのでしょう。
そんなボンドの愛ですから、射撃された後は一度崩れたのだと思います。Mの指令だと知ったからこそ。崩れた時の汚れっぷりふてくされぶりは半端でなかったです。

MもMで、彼女はたぶん今まで何人も、部下の犠牲に遭遇してきたのでしょう。
送り出したまま戻ってこなかったり、シルヴァのように残酷な目に合わせてしまったこともあったでしょうね。
あえて復帰テストでは赤点のボンドを「戻ってこさせた」のは、あまりにも長くその地位に居続けたMの判断ミスのようで、また、今までの繰り返しを破ろうとする彼女の意思だったかもしれません。

今回、「ボンドとは何?」「MI6とは何か?」という、シリーズの根幹にもある問いに光を当てられている気がしました。

ダニエル以前だと、深く語られなかった点かもしれません。

最後の戦いに選んだ場所は禁じ手のような場所。
闇の暗さと炎の赤が交わる戦いです。映画館内も真っ暗で、重い銃撃音が響きます。
「スカイフォール」の題名になった場所は故郷ではなく、古くからの祖先の狩猟屋敷なのではないかなと思うのですが……。ボンドは土地の地主家系だったのでしょうか。シャーロック・ホームズと同じですね。

でもシルヴァによって燃やされた炎は、まるで子宮帰りのような抜け道の過去の話も合わせて、「ボンドの死と再生」を感じさせられました。
エンディングは驚き!
新たに生まれ変わりながら、懐かしい過去に戻っていき、そしてそれが未来に続いていくのですね。今までMにだけ忠誠を誓い、スタンドアロンな立場だったボンドが、「属する場所」をようやく見つけたような気がしました。



007を知っている人なら見てほしい。
もう少し深みに行きたいと思われたなら、フレミング原作の小説にもぜひ機会があれば見て頂きたい。6代目のダニエル以降は、原作の影響が大きいです。
特に今回の「スカイフォール」は、原作を元にメンデス監督やダニエル達が作り上げられた印象を持ちました。


面白い作品で良かった。
ダニエルは素晴らしい役者さんで良かった。
美しい風景に満たされた映画で良かった。
音響も風景も緻密に計算され、完成度の高い映画で良かった。
出てくる人すべてが美しい映画で良かった。
今はそんな思いで一杯です。
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プロフィール

高砂 舟

Author:高砂 舟
twitterもやっています。
@takasago_fune

偏った本読みと太極拳が趣味です。低レベルですが腐です。
今はグレアム・グリーン継続中。星野道夫さん、宮澤賢治氏、藤沢周平氏をよく読んでいます。
植田正治氏の写真も大好物。

大人計画とグループ魂とっかかり中です。

宝塚は長く観ています。観劇回数は少なくとも、おばあさんになるまで細く長く見ていきたい所存。

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